ぱーこシティ(令和版)

18年続いて来たぱーこシティは、ついに元の場所に還ることをやめました。

大根

zoom講演

 今日の一句  大根1/2配達されてしっぽかよ 浮浪雀

 土曜日はbe。今日の相談者は30代女性。人に優しくしてもいいことはあまり返ってこない。相手が図に乗っていいように使われるだけではないか。人に優しくするのはいいことだと思っているが釈然としない。子供も優しい子にそだったが損をするばかりではないか。回答者は私の嫌いな評論家。たまには優しくしないで断ってみれば。そうすれば人に優しいことがどういうことだかわかるはず。人に優しくしているつもりが、実は人から優しくしてくれることを期待してるんじゃないの?(と書いてないけど、そう伝えたいらしい)利他的とはなにも意識しないで行った行為が結果として利他的に働くことが基本です。ともはっきり書いていないけど、そう言いたいらしい。見返りを求める親切は相手のためだけじゃない。情けは人のためならずの対偶だね。これも志の低い相談だなあ。なので、覚えていなかった。

 腰の不具合がまだ続いているだけでコロナウィスル感染の症状はほぼなくなった。昨日も朝の4時過ぎまでTVerのドラマを見ていた。厨房のアリスの第2話と不適切もほどほどにしろ、だったっけ、阿部サダヲでクドカンのやつ。なので、8時半に起きた。QUALAをだらだら見て、時間が潰れた。巡業公演のまとめをやってみようとしたが、結局調べていくうちに面倒になってやる気が失せてくる。まだ作業としても方法論が固まっていないためだ。

 これでまったく外出しないで6日間が過ぎた。これは生まれて初めてじゃないか。小学校4年生の時、交通事故で2週間病院に入院していた時を除いては。かといって何の特別なことはない。ただただ目の前の日常が過ぎていくだけである。という感じ方。この現実感のなさがコロナの症状なのか? そんなことはない。また毎日やること、やらなくてはならないことが続いている日々に戻っていくのがそこはかといやなんだと思う。

 そうだ午後2時から1時間半のzoom講演を見た。これは地元の三鷹市民大学の企画だと思う。500円払った。食後の昼寝から目が覚めたのが2時8分だったので、遅れて接続、なんとか入れた。講師は発生遺伝学が専門らしい。人間の手ができるとき、指の間に水かきのついた手ができて、その水かきの細胞が死んでいくことで手が完成する。このように生物が成長していく時は余分なものを作っておいて、そこの細胞が死んでいくことで形が完成していくということがよく起こる。ハエのさなぎだと、身体の中の幼虫の細胞が生体の細胞に取って代わるのだが、このとき幼虫の細胞が死んでいくのと生体の細胞が数を増やしていくのが同時に起こっている。幼虫の細胞が変化していって成体の細胞になるのではない。増殖、成長には不必要な細胞を作っていってそれが死んでいく過程が必要らしい。この細胞死をアポトーシスと呼ぶ。

 この話は50年前に聞いた。演者は東大薬学部の先生だが、キャリアの途中で都立大学の修士課程を卒業している。私が都立大を卒業したあと2年後に学部の生物学科に入学している。私と12歳違うことになる。日本細胞死学会理事長に就任しているからアポトーシスの分野では日本の第一人者ということになる。第一人者にその分野の話をさせると細部のリアルな話が圧倒的に面白い。教科書の記述は一般化抽象化してしまうので、一番の面白い部分が抜けている。ドイツの第一人者に手紙を出して、その先生のもとで研究員をやらせてくれ、というとポストは埋まっている、代わりにハーバード大学医学の先生を紹介するのでそっちへ問い合わせてくれ、というところから今の研究が始まるのだ。その時の手紙を見せてくれた。

 線虫、ショウジョウバエ、とアポトーシスの具体例をわかりやすくおさらいしてがん細胞の話にうつる。いずれも自分が研究してきたことなので、大変わかりやすい。私も50年前はこういう話を聞いて大変コーフンし大学院進学も考えたが、バイトしながらの生活ではそのことに時間を集中して使っている奴らにたちうちできないだろう、と諦めて教員試験を受けたのだ。

 もっともそれまでの生育歴に学者になっている身近な人間がいなかったので自分のような(身分の)人間が行くところではないと思っていた事もある。教員なら母親の弟が都立高の社会科の教員だった。まあそんなことも思い出し、知的関心を大変引き出してくれたと同時に昔のほろ苦い感情も思い出した。1時間半はあっという間に終わり、質問も活発で、あきらかに演者と同レベルの発言者もいて、大変活発な質疑応答だった。3分ほど終了時間をオーバーした。

 私は、個体発生は系統発生を繰り返すと言われているがその遺伝発生学的な後付は見つかったのか?と聞いてみたかったが、zoomのチャット機能をうまくつかえなかった。そのような問題意識を演者の先生がもっていないはずがない、とも思ったからだ。それは用意したスライドの中に、消滅に関してレベルには3つある。タンパク質(分解酵素)ー細胞内(オートファジー)、細胞(アポトーシス)と言う図を示していたからである。この後には当然、組織(ガン?)、個体(個体死)、社会(ある階層の消滅)、国家(その滅亡)と続くわけで、最後は恒星(ビッグバン)、宇宙(消滅)となる。アポトーシスでは、死にゆく細胞が周りの細胞を活性化させる物質を出す、という事実が知られており、単純に不要なのでいらなくなるのではない。死にゆくものも周りに必要な存在としてあらかじめプログラムされている、と解くのである。