ぱーこシティ(令和版)

18年続いて来たぱーこシティは、ついに元の場所に還ることをやめました。

出替(でがわり)

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今日の一句 出替りの講師稼業や去りがたし 浮浪雀

 今日の三択。芥川龍之介の書いた桃太郎は? 桃太郎が悪人・鬼が仲間になる・ぼけ。厭世家芥川の面目躍如。永野芽郁のやりたいスポーツは? ゴルフ・野球・忘れた。

 中学校そろそろ最終講義だ。1年限りの講師稼業のそこはかとないあはれ感がかなりいい。自分なりに苦労していろいろやってみた。週に二度通う通勤路に今は梅が満開である。校門前にはダックスの老犬を散歩させている老婆がこの時間必ずいる。手押し車に老犬を乗せてゆっくりゆっくり押している。玄関は2階にあり、外部階段を登って靴箱まで行く。私の靴箱は右列最下段にある。その正反対の左列最上段は校長の靴箱なので、私はこの学校では一番下のカーストなのだ。わかりやすい。1年前初めてきた時はこの靴箱に桜の花びらの紙型が貼ってあった。新人の靴箱だからだ。さりげない配慮だがいい感じだ。私と同じようにこの年に異動してきた職員の靴箱には皆貼ってあった。校長も副校長も桜だった。私の採用面接をした副校長はもういなかった。面接の時の世間話でなんとなくその気配を感じていた。4月にきてみるとやはりそうだった。

 一番騒がしいクラスの学級日誌をみると、私の時間の欄に、少し騒がしかった、と書いてある。毎回そうなのだ。その前の時間のクラスは話をきちんと聞くいいクラスで大変やりやすいのだが、私はなぜかつまらないのだった。この騒がしいクラスのある男子は質問があります、と挙手するので、そばに行くと、先生マリファナやったことありますか、と授業と関係ないこと聞いてくる。あるよ、というと色めきたって、えー時代ですか、と知ったようなことをいう。中2男子。

 2コマ答案返して答え合わせをして、試験内容と同じ今年の都立問題を解説して、来週の実験の予告をしたら時間が来た。都立問題の理科は英数国が自校作成でも共通問題なので、そうした学校用に難しい問題を入れてある。今年の理科は6番の(3)がそれだった。抵抗の並列回路と直列回路の消費電力が同じ場合に、ある抵抗の両端の電圧比はいくらか、という問題である。具体的な値が与えられていないので、方程式を持ち出すか、電力は電圧の二乗に比例することを使って求めるしかない。計算の値は4とか25とか簡単なものだが、この考えはやっていないと試験場では思いつかない。

 来週の予備実験をやっておこうと理科室の鍵を取りに行くと、鍵がない。私が1時間目に使って戻したはずだが、見当たらない。ポケットに入れたままかと思いさぐってみるがない。鍵を持ちだしたら、鍵のあった場所に磁石のついた丸い名表を貼り付けることになっている。それもない。自分がしたことが心許なくなっているのは、毎朝見ている番組のどうでもいい事柄が夜に思い出せないのでわかる。理科室にさしたまま、ということがあるかもしれないので行ってみると、鍵は開いていた。そうっとドアを開けるとがらんとした理科室に男子生徒が一人座っている。私を見て、A先生が来るのを待っています。と説明する。ぼくがやらかしたので、待つように言われました。なかなか礼儀正しいやつだ。わかった、と言って出てきた。A先生は指導資料など取りに行ったのだろう。わざわざ別室を使って指導するつもりだから時間がかかるのだろう。これでは予備実験はできない。仕方ないので、帰ることにした。

 それまで3学期の成績入力をやっていた。今の成績は観点別評価と言って三つの項目を点数化して入れないといけない。試験でわかる点は半分以下程度しか全体の成績に反映しない、という制度設計である。それは現場の感覚と違う(昭和頭の私だけか)ので、どこかに皺寄せがくる。エクセルの表計算がないと成績が出せない。実験のレポートは各回ごとにこの三観点の評価が出る。提出課題にこの三観点の評価がつく。そして試験は各問題にこの三観点がわり振られている。一人一人の生徒にこの3項目の三観点があるので、9個の枠に数値が入っている。最後は同じ観点を集計して成績をだす。各観点は3段階のA,B,Cでつけることになっている。10数個100段階のデータの集計は最後に1、2、3、4、5の評定として表現される。この総合点が内申点となるのだ。

壮大な無駄をしているとしかおもえない。しかし現場の先生方は変に能力が高いので、この無駄な努力を一見整合性のあるような表を作って完成させ、さらに最後は妥当な結果に落とし込むことに成功している。あっとびっくりだ。

 結局エクセルの入力に2時間ほどかかって3学期分の成績入力はおわる。でも私の成績は1/4しか反映しない。理科週あたり4時間のうち私が担当しているのは1時間だけだからだ。

 3時半頃帰宅して、昼寝。youtubeで針金モーターを検索して実験のネタを仕込んでみる。

妻がケーキを買ってきた。明日が私の誕生日だが、それ用ではない。前日の今日が結婚記念日だからだ。私はまっとく意識していなかった。今日の朝の雑事が覚えられないのだ。55年前のことが思い出せるわけがない。いつもはローソンのケーキだけど今日はケーキ屋のケーキだた。アンテノールと金紙が貼ってある。ペロリと平らげて体重がふえなければいいが。