ぱーこシティ(令和版)

18年続いて来たぱーこシティは、ついに元の場所に還ることをやめました。

ほととぎす

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今日の一句  鶯谷のほととぎす苦しそう 浮浪雀

 今日は早いでの、ルーティンはなし。その上雨だし。バスは満員で積み残しだし。それでも8時前に職場についた。今日の授業の予習をして、事務室に現金で給与をもらいに行く。銀行振り込みの記入用紙はこの前と違っていた。銀行のカードのコピーで手続きができるので、昼休みが終わったあとで提出してきた。

 3コマは楽に流して終わる。肉眼の分解能を板書していて、桁をミスっていた。そこを男子が指摘する。先生それ違います。この言い方がいかにもできる子だった。自分が間違っていないと確信している言い方。できない子は、自分が合っているかどうか不安なので、そこはどういう意味ですか?とか疑問形で指摘する。もちろん教員の間違いを指摘することが、自分の正しさをひけらかすようなのでそこを避ける意味もある。そういう自意識を飛ばして、そこ違ってます、と真っ直ぐに指摘してくる。そうか、この教室の空気は駿台予備校の空気に似ている。講師は一方的には話している。生徒は黙って一方的に聞いている(ように見える)。その距離感。

 40年以上前に駿台予備校に通っていた時、英語のカリスマ講師の講義、前列にいた学生が、先生緑の字は見えずらいです、と講師が使っているチョークの色について指摘した。有名講師は、ん、と一瞬止まったが、その学生の言うことに全く気が付かないように講義を進めた。なかなかできない対応だ。次の時間から、その講師は緑のチョークをいっさい使わなかった。文字の大きさ、その色、について細かな配慮がありその講師の板書は確かに必要な知識を伝えるのに芸術的な完成を見せていた。

 もっとも私は異世界転生で進学校に迷い込んだヘタレなので、そうだね、ありがとう、と書き直して、そのまま授業を進めた。50分授業で残り15分を残してあとは問題集をやってください。と進行するのが今のパターンである。そうして黙って生徒の様子を見るのだが、みなそれぞれのやり方で問題を解いてノートに書きつけているのがほとんどである。たまに寝ていて、俯いている子もいるが俯いて問題を考えている、とそんな雰囲気を醸し出している。私語はまったくない。ここでこの異世界で私は何をすればいいんだ。異世界チート現実無双とは違った世界だ。

 そのことの答えが寝る前に入浴中に聞いているラジオから流れてきた。ラジオ宅急便NHKR1の深夜放送である。そのオープニング23時から番組で、異様に切迫した独白が流れてきた。「自分は小さい時からまわりの世界が理解できなくて孤立していた。大きくなってそれは自分だけはなくてな似たように思っている人がいるんだと、ある主婦の書いたものを読んで思った」進行役のインタビュアーもその独白を止めて質問を発することができない。対談番組でかなり長い独白の途中で、短く質問を挟むが、その口調も妙に緊張したものになっている。これは聞き逃すわけにはいかない、と聞いていると、発達障害とかいう用語が出てきた。

 浴槽につかるのは10分と決めているので、番組は気になったがラジオ番組は後でも聞ける。番込み途中で風呂から出た。後から検索すると、声は綾屋紗月と言う人で当事者研究の人らしい。等事者研究の「当事者」という響きは健常者という言葉の響きと同じようなある種の息苦しさを感じさせる。この人のパートナーが小児科の医者で障害者である。著名人だ。こちらは新聞で名前を見たことがある。この二人の生活が「見る障害、見えない障害」というドキュメンタリー番組になっていた。daily motionで見ることができた。さっそくダウンロードした。

 私もこの歳になるまで現在進行完了形で、この世の中とどうも違うらしい自分については随分と思い煩ってきたので、無関心ではいられない。で統合失調症は最近では発達障害と重なる診断名となっているようだ。そんな記事を専門雑誌で読んだ。統合失調は100人に一人の割合で存在する、というのがほぼ定説である。私の担当する生徒は120人、するとこの中に一人いるかいないか、その見えない生徒に向けて何かメッセージを発しておくのがこの異世界教員のまあ、ミッションではないかい。

 99%の定型発達の生徒諸君を無視せずにほどほどの授業をこなして、残り1%のいるかいないかわからない生徒に向けての引き継ぎのメッセージ。

 ところで通信高校のレポートの採点をまだしていないこと思い出した。締め切り後一週間以内にしておく、とこの前zoom授業で話したばかりである。これはまずい、と作業にかかった。まず採点項目を分類して集計するエクセルの表を作るところから始める。例の知識・技能、判断・思考・表現、主体的関わりの3項目である。その次に受講生の名簿作り。この学校では教務担当の専門職員がいないので、受講生はteamsのレポート提出状況から作らなくてはならない。26名いた。普通に考えると少ないが、レポートの問題は大問15問、各問題3〜9個の採点箇所がある。レポートNO1は88箇所採点部分があり、これの26人分だから2288問をチェックして分類し、その評価3項目別にA,B,Cの評価をつけて返却しなければならない。一人15分ほどかかる。これが26人だから6時間30分かかる計算である。帰宅して始めたが、メシー轟沈夜中に起きる、という日課では半分しかこなせなかった。